
お施主様のご希望は、決まり切った規格住宅ではなく、ご家族に合わせたオーダーメイド住宅。
ご家族の家造りに対する「想い」を反映させた家。
そして、住まうご家族が健康に暮らせるよう、自然素材を使った住まい。
想いを受け止め、希望に応え、しかし「お客様の思い描く理想の住まい」には留まらない。

家を建てるまで20軒近くの完成見学会に足を運ばれたお施主様には、その過程で確固とした住まいへのイメージが出来上がっていました。
- 規格住宅では満足できない。自分たちの家に対する「想い」をちゃんと受け止めた、自由設計の家が良い。 そして素材は家族が健康に過ごせるようなものを選びたい。できれば大工さんと一緒に家を建てたい。
決まった形ではなく、自分たちだけの家。家族の想いやこだわりを受け止める設計。住人の健康を害するような素材を使わない。信頼のおける大工に家を造って欲しい。
果たしてこれは贅沢な要求でしょうか。
いいえ、家を建てたいと思う方なら誰でもそう願うでしょう。
- 土間と縁側を造って欲しいんです。それと、屋根付きのカーポートが欲しい。
お施主様が住宅に関してはっきりとしたご希望持たれていると言う事は、設計士にとっては全く負担ではありません。 むしろ逆に、設計プランを練るための重要な手掛かりとなります。
- 土間に縁側ですね。あと、「屋根付きの」カーポート。他のご希望はありますか?
- 車は2台分のスペースが欲しいですね。収納は「これでもか!」ってぐらい欲しい。それと、楽器の演奏ができる部屋が欲しいんです。
- 楽器は何ですか?
- ピアノです。あと、将来的に両親と同居するかもしれないので……
- 今すぐに同居される訳ではないのですね。分かりました。
和やかに打ち合わせは終わり、設計士はお施主様をお見送りしました。
ご希望である屋根付き駐車スペース、土間、縁側。将来ご両親と同居するかもしれない。ピアノの弾ける部屋。収納はたっぷり。
徐々に設計士の頭の中で理想の住まいが形になっていきます。
そして次回打ち合わせ時、お客様は非常に驚いたと言われます。
- 何ですか、これは……大きな、屋根?
- 大屋根の軒が2台の駐車スペースをカバーしています。「屋根付きの」カーポートです。
- あ、なるほど……。
- 例えば雨が降っている時でも、この屋根の下に駐車できるならば、そのまま玄関まで濡れずに移動できるわけです。カーポートを独立させるよりも便利でしょう?

設計士が提案したこの「屋根付きのカーポート」は、お客様にとって全く予想しなかった形だったそうです。 大屋根は利便性と同時にデザイン性も追求し、アクセントとして木製ルーバーをあしらっています。
- 大屋根はデザインとして面白いというだけでなく、太陽光発電も設置しやすいですし、庭が大きく取れない分、かなり大きなルーフバルコニーが作れます。
屋根が大きいので、外部からはバルコニー内部は見えませんよ。
ご希望だった土間は、玄関・キッチン・屋外を直接結んでいます。 買い物の荷物って重いでしょう? 一度玄関を上がって、それからキッチンまで歩くのは大変ですよね。 - 確かに! 玄関から上がらず、土間を通ってすぐキッチンに荷物が置けるのは便利。

- リビングに隣接した洋室は、今現在は多目的スペースです。今は使いやすいように二面に入口がありますが、もし将来、ご両親と同居されることになった時は、リビング側の開口部をふさいで居室としても使えます。 もうひとつご希望されていた縁側はリビングに接しつつ、日当たりのよい南面に向かって配置してあります。
設計士による提案はまだまだ続きます。
- 二階に上がる階段には引き戸を付けましょう。ここを閉じることができれば、リビングの冷暖房効果が大分違うと思いますよ。
- 省エネですね。趣味部屋はどうなりました?
- 趣味の部屋は独立した一部屋として二階に配置します。ここにピアノが置かれるということを前提に構造計算しますから、二階でも強度に問題はありません。
- 収納はどうですか?
- 小屋裏を利用した大容量収納と、階段下にも収納を作ります。
- 階段下収納か。階段下は収納だけに留めて欲しくないなあ……もっと有効活用する方法はありませんか?
- では、収納ではなく一つの空間として考えてみましょうか。

お客様のご希望に、設計士の想像力が刺激されます。
階段下の空間は延長されたキッチンの一部となり、収納スペース、カウンター、冷蔵庫置き場を確保。
リビングからは壁が目隠しになるので、スッキリとした印象に。
- リビングの一部は梁を出して、柱を一本見せましょう。リビングのシンボルとして、お客様にも強い印象を与えます。 水廻り関係はこちらにまとめてありますが、リビングからの視線を遮るためにスリットを置きたいと思うんです。壁と違って圧迫感がないし、空間のアクセントにもなります。

そして、M様邸の中で一番遊び心に溢れた子供部屋。この部屋の仕掛けは、打ち合わせの時のちょっとした会話から決まりました。
- 子供部屋には屋根裏のロフトがあるんですね。うん、どうせなら楽しい感じにしたいな。例えば……登り棒とか。
- 登り棒ですか? 面白いですね、つけましょうか!
- えっ。登り棒、付けられるんですか?
- できますよ。次の打ち合わせでイメージスケッチをお持ちしましょう。

現場での小さな打ち合わせも沢山ありました。
特に玄関周りは、ステンドグラスの配置を決めるために、実際に同じサイズの木材を切断して壁に当ててみたり、飾り棚の位置を変更したりと、まさに「現場合わせ」。
しかしこうしたご希望を「できません」で終わりにするのではなく、お施主様と一緒になって解決していく、それが平成建設の「家造り」です。
お客様には後日、生活動線や利便性と同時にデザイン性も考慮したプランニング、要望に対して様々な提案ができる、引き出しの多さが良かったというお言葉を頂きました。


お施主様のご希望を設計に盛り込むのは当然のことです。 けれど、お施主様の思い描く「理想」を形にする、それだけで終わりにはしたくありません。 図面を見て「えっ?」と驚いて貰えるようなアイディアがあり、外を行く人が「おや?」と思わず目をとめる外観があり、 それでいて同時に住みやすさ、暮らしやすさを追求する住まい。いわばお施主様の「理想を超えた」家を設計していきたいですね。
- 1970年 東京都生まれ
- 1994年 横浜国立大学 工学部 建設学科卒業
- 住宅以外にもビル・商業施設設計、インテリアを含めたリノベーション・リフォームも得意。